ヴィム・ヴェンダースを観た

もう日付的には一昨日のことになるが、早稲田松竹でヴィムヴェンダースのドキュメンタリー映画2本立てを観てきた。

ひとつめはキューバの老齢ミュージシャンを描いた『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』。国家の変遷とそれを乗り越える音楽みたいな感じだったけれど、キューバという特殊状況の国を使用した、過去と前時代への憧憬に過ぎないミュージックヴィデオに思えた。あまり作品として面白いとは言い難い。

2本目は報道写真家セバスチャン・サルガドを追った『セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター』。胡散臭いタイトルである。しかし、さっきの映画と打って変わって、洗練された画面や挿入される痛ましい美しさを持った写真たちが作品に深みを与えてゆく。構成としてはありふれてて、社会的事象から人間の闇を写した写真を撮っていたサルガドが、対象を美しい大地に乗り替えるという感じであったが、ただただ自然が美しすぎてやられた。自然の美しさを際立たせるためだけの90分、いや、自然の美しさを際立たせるためだけの50年近い半生を先に見せられたようでもある。

ドキュメンタリーを2本見終わったあと、立ち上がったときに4時間座りっぱなしだったことに気がついた。いてて。